植木 力

私が生まれたのは、1958年(昭和33年)私の家も、まわりの家も貧乏な時代だったと記憶しています。

その後の高度成長、石油ショックなど、物があることで幸せの価値と思う時代が長く続いた、現在も続いていると思います。その様な時代の中、高校生の時に出合った一冊の本。松下幸之助のPHPでした。その日から、教科書は全く読まず、小遣いは全てPHPの新刊本になったのです。

高校生がPHPを読むことで周囲からは変わった高校生に見えていたそうです。本に書かれていたのは「商売は、お金儲けだけでは駄目、社会貢献が必要」松下幸之助の言葉でした。

それから約25年後(2001年)、あの言葉を信じ『社会貢献とともに成長したい』そんな想いで退職型の社内ベンチャー制度に応募し、カスタネットを創業しました。

企業の営利活動と社会貢献活動(非営利活動)は、決して相反するものではなく、むしろ親和性があり車の両輪のようなものである。と本の教えを確信しての行動でした。

東日本大震災以降、ビジネスのあり方が環境や社会問題などと真っ向から取り組み、それを解決しながら事業展開するソーシャル的なビジネスに日本人の意識が大きく変わり始めました。

それは、松下幸之助の予言のように、企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)とはコンプライアンスの徹底でも社会貢献でもなく、本業を通じて社会的課題を解決するソーシャルビジネスが動き始めたと思います。

鍵山秀三郎氏の考え方、生き方に学ぶ塾生になり「大きな努力で小さな成果を・・多くの人は “小さな努力で大きな成果”を求めようとするが、“大きな努力で小さな成果”を得ようとする生き方の方が、確実。。。」と聞かされているのですが、直ぐに成果を求めようとする自分がいることに反省しています。こんな小さな企業が、活動を継続できているのは鍵山秀三郎氏との出会い、社会貢献室の顧問に就任して頂いた、堀田力さんを始めとする多くの方々のご支援の賜物と思っています。

第一版の報告書は、日本中から問合せなどが殺到し、増刷、送料の負担も少なくなく、嬉しい?悲鳴でした。特に日本のCSR界において第一人者である㈱損害保険ジャパン 関 正雄氏(当時 CSR・環境推進室長)が新聞紙面で弊社の報告書を絶賛していただき、日本中に報告書の存在が広がりました。

今回も、外部の力を借りず社内で制作したため、大企業のCSR報告書のような立派なものはできていません。しかし、この報告書もP(Plan=計画)D(Do=実行)C(Check=評価)A(Act=改善)サイクルのように、前回より今回、今回より次回と上がっていけば良いと思っています。

それも、CSR報告書の見栄えではなく、“大きな努力で小さな実りのある成果”を。

そして、長期の目標として、従業員もその家族も取引先も地域の人々も、弊社にみんな自然と吸い寄せるように集まる『マグネットカンパニー』を理想の企業像、それが当たり前の社会になるようにしたいと思っています。

今後ともご支援の程、よろしくお願い申し上げます

(『小さな企業のCSR報告書』から)

株式会社カスタネット
代表取締役社長・社会貢献室長
植木 力(うえき ちから)